「うちの新人、図面が読めんのですわ」——製造業の現場で、最も頻繁に聞く困りごとです。
ただ「読めない」と一口に言っても、中身はかなり違います。線が何を表しているか分からないのか、記号の意味が分からないのか、読めるけれど材料取りまで考えられないのか。どの段階で止まっているかを見分けないまま教えると、たいてい空振りします。
1.「図面が読めない」の5段階
| 段階1 立体が起きない | 三面図を見ても、頭の中で立体にならない。第三角法という言葉自体を知らない。ここが一番多い入口です。 |
|---|---|
| 段階2 寸法が追えない | 形は分かるが、どこからどこまでの寸法なのかが読み取れない。基準がどこにあるかが分かっていない。 |
| 段階3 記号が分からない | 仕上げ記号、溶接記号、加工指示。書いてあることは見えているが、意味が分からないので無視してしまう。 |
| 段階4 公差の意味が分からない | 数字は読めるが、なぜその公差なのかが分からない。だから「だいたい合ってればいい」と判断してしまう。幾何公差・はめあい公差はここ。 |
| 段階5 先が読めない | 図面は読めるが、材料取り・段取り・工程の順番までは考えられない。「読める」と「使える」の間にある最後の壁です。 |
新入社員なら段階1〜2、中途採用や他部署からの異動なら段階3〜4で止まっていることが多いです。まずどこで止まっているかを確かめてから教える。これだけで、教える側の徒労がかなり減ります。
2. 教える順番
順番を守ると、驚くほどスムーズに進みます。逆に、公差や記号から入ると必ず詰まります。
三面図と立体を、行ったり来たりさせる
実物を手に持たせて、その図面を見せる。逆に図面を見せて、どの実物かを当てさせる。この往復を何度かやると、頭の中で立体が起きるようになります。ここを飛ばして先に進んではいけません。
寸法の基準を教える
どこを起点に測っているのか。設計者がなぜそこを基準にしたのか。基準が分かると、寸法の並びが意味を持ち始めます。
記号を、必要なものから
JIS記号を全部覚える必要はありません。自社の図面に実際に出てくるものだけで十分です。使わない記号を暗記させても忘れます。
公差は「なぜ厳しいのか」から入る
数値を覚えさせるのではなく、その公差が守られなかったときに現場で何が起きるかを見せます。組み付かない、ガタつく、客先で不具合になる。理由が分かると、勝手に守るようになります。
材料取りと工程まで広げる
面積・体積の計算、材料の取り都合、どの順番で加工するか。ここまで来ると「図面が読める人」から「図面で仕事ができる人」になります。
3. 現場で教えると失敗するパターン
忙しい合間に、切れ切れに教える
今日は寸法、来週は記号、その次は公差。間隔が空くうえに順番も飛ぶので、頭の中で構造になりません。まとまった時間で、順番どおりにが原則です。
「見て覚えろ」で済ませる
図面の読み方は、技能ではなく知識です。見て覚えるものではなく、教えれば済むもの。ここに「見て覚えろ」を使うのは、単純に非効率です。
教える人によって説明が違う
ベテランごとに流儀が違うと、若手は混乱して結局どちらも身につきません。誰が教えても同じになる部分は、先に共通化しておくべきです。
できたかどうかを確認しない
説明して終わりでは、分かったつもりが残ります。実際の図面を渡して読ませ、口で説明させる。説明できて初めて読めていると判断してください。
4. 自社の図面で教える意味
市販のテキストの練習図面は、きれいに整理されています。ところが現場に来る図面は、手書きの補記があったり、古い規格が混ざっていたり、客先ごとに書き方の癖があったりします。
教科書の図面が読めても、御社に来る図面が読めなければ意味がありません。だから当校では、御社の実際の図面を題材にした読解演習を組み込みます。基本の型は同じでも、練習するのは御社の実物。翌日からそのまま現場で使えます。
図面読解はコアテーマ8分野の1つめに置いています。図面が読める人が増えると、現場の手戻りが目に見えて減るからです。
5. よくある質問
どのくらいの時間で読めるようになりますか。
止まっている段階と、どこまでを目標にするかで変わります。三面図が起きるようになるだけなら短時間で届きますが、公差の意味を理解して材料取りまで考えられるようになるには、間隔を空けた複数回の演習が要ります。当校では、御社の目標をうかがってから回数をご提案しています。
設計担当ではない人にも必要ですか。
むしろ、そこが効きます。加工者・検査担当・営業が図面を読めると、部署をまたいだ確認のやりとりが減ります。塗装メーカーの事例では、中堅社員向けに図面の基礎と表面積計算を重点的に扱いました。
CADが使えれば図面は読めますか。
別の能力です。CADは描く道具で、図面読解は設計意図を汲み取る力。描けるけれど、なぜその公差なのかは分からない、という方は少なくありません。
社内でやるか、外部に頼むか迷っています。
段階1〜3までは社内でも十分教えられます。人によって説明が変わりやすい公差や、現場の判断が絡む材料取りは、外部を入れたほうが早いことが多いです。技能伝承が進まない理由の記事もあわせてどうぞ。
費用を抑える方法はありますか。
訓練時間が10時間以上などの要件を満たせば、人材開発支援助成金の対象となる場合があります。詳しくは助成金の使い方をご覧ください。
まとめ
- 「図面が読めない」は5段階ある。まずどこで止まっているかを見分ける
- 教える順番は、立体 → 寸法の基準 → 記号 → 公差の理由 → 材料取り
- 切れ切れに教えない。まとまった時間で順番どおりに
- 記号は自社の図面に出てくるものだけでいい
- 説明させて初めて「読めた」と判断する
- 教科書の図面ではなく、御社に実際に来る図面で練習する
御社の図面を題材に、基礎から。
いま何人が、どの段階で止まっているか。うかがったうえで、必要な回数と内容をご提案します。相談・お見積りは無料です。3営業日以内にご返信します。
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